無題
ナナ
(続きです)
二人は布団から立ちあがって、私の身体を引き上げる。
初めはずっと抵抗していたんだけれど、私はいやいやといいながら、もう抵抗することはない。
…それだけじゃない。
私は何処かでこの二人を求めてる。
胸の奥がきゅんとなる。
濡れた耳に暖房の風がふれて、私はまた身震いする。
さよは私の後ろにまわると、私の両方の手首を掴んで、頭の後ろに運んだ。
双子の姉であるさやは、正真正銘のサディストだ。
彼女は私と…時には私達の嬌声を聞いて、目をきらっと輝かせる。
彼女のその目に魅入られると、今の私はもう何も逆らうことができない。
さよは後ろに運んだ私の手首に、細い紐をかけていく。
多分荷造り用の白い紙紐だ。
彼女は私の肌に「痕」が残るのを好んでいた。
「さよ、駄目だよ、明日バイト…」
『そうでしたぁ?…でも関係ないですよね。だって先輩、縛られた時と縛られてない時で、全然違うんだもん。コエ。』
「知らないよ…そんなの。」
さよは器用に、手首の突き出た骨と手の間に何重にも紐を縛りつけ、手の間の紐を縛る。
拙い手つきなんだろうけど、それだけにその拘束はきつく、相手の動きを奪う点で、無駄くて、容赦がない。
『あーん、綺麗。先輩のカラダ…』
この声は、さゆだ。
彼女は折りたたんだ私の脚の向こうから上半身を付きださせて、私の胸にキスをした。
「駄目、見ないで…恥ずかしい…」
『え?何処が恥ずかしいんですかぁ?』
「何処って…」
『…ここですか?』
さゆの舌が胸の、尖った先端の周りを撫でる。
彼女の頬と、伸びた髪の毛が私の乳首を撫でる。
その上を舐めれば、甘い唾液が少しそこに垂れる。
だけど彼女の舌はそこを通ることがなく、そのまま私の顎を右手で持ちあげて首筋を舐める。
次に無理やりさらけ出された脇のくぼみを舐める。
二の腕の裏側を舐めて、指先がお腹の横を這っていく。
両手が昇ってきて、頭の髪の毛と細胞を端からそっとさかなでる。
ここですか?それともここ?彼女はそのたび私に質問する。
その全部が私の恥ずかしさなのに。
私の頬はすっかり赤く染まって、畳んだ足や腕の関節が桃色に染まって、その吐息ははぁ、と甘く漏れる。
『ほら、縛られて感じてる。』
『違うよ、舐められて。』
『ひょう?』
「あっ…」
手首を縛り終えたさやは、片手で結び目をぐいっと背中側に引っ張りながら、無意識にばらばらに畳んだ私の指をくわえた。
『ひょうみたいらね(そうみたいだね。』
そういいながらさやは、少し暴れる私の舌を、慰めるみたいに、ふやけちゃいそうな唾液に濡れさせてゆく。
駄目。そんな風にされたら…私の指は、温かい彼女の海の中で不器用に泳いでいた。
するとさやは私の手首をぎゅっと掴んで、耳元で囁いた。
『駄目だよ。舐めてもらってるんだもん。ちゃんと舐めやすいように差し出さなきゃ。いいですか?』
「…う…うん…ごめ…ん」
私は言われるがまま、右手の人差指と中指を、そっと伸ばした。
それをさやは根元から舐め上げて、はむっと加えると、キスするように愛撫していく。
さよは私の小ぶりな胸をいじると、乳首を口にくわえて、同じように愛撫していった。
私の頭の中に、さっき両耳から響いた音がまた響いてくる。
神経を直接撫でる様な、そっとなでる二人の愛撫に、私の身体はどんどん火照っていく。
さよが焦らした胸をいじっているせいだろうか、舐められる指も、胸の先端みたいに感じる。
「はぁ…ぅん、ぁ、は…はっ…はぁ―――ぁ、あ…」
あぁ、もう何も見えない。
さやが私の背中を、おしりのあたりからゆっくりと舐めて行く。
「あっ!」
ぞく、っと電気の様な信号が脊椎を走る。
さよは私の下腹部に何度もキスしながら、そっと私の服を全て剥ぎ取っていく。
全部を脱いだ服の下に、冷たい感触が走るのが自分でも分かった。
『ねぇ、さや。』
『うん?』
『今日の先輩はねー、凄くなっちゃいそうだよ。ほら。』
さよは太腿をさする様に往復していた沙耶のてをとって、私の足の間をそっと撫でさせた。
『あらー、先輩どうするんですか?こんなにしちゃって。』
『お仕置きが必要ですよねぇ、これは。』
「…お仕置きって…だって…」
『だって約束したじゃないですか?今度は先輩が私達をきもちよくするんだって。』
『それなのに私達より先に気持ち良くなって、やらしいなぁ。』
『やらしいこには…』
やらしいこにはお仕置きだ。
“あぁ、私は期待してるんだ…”
「お仕置きして。この前よりももっと…」
私は頭の中で呟いた。