彼女の左手 俺の右手
のろ
先日、某鉄道の特急(所謂乗車券の他に特急券が必要な列車)に乗ったときのこと。
窓側の席に座っていた俺は流れる景色を眺めては「たまにはこういうのもいいな」とまどろんでいた。
そんな俺の耳に「コーヒー、ビール、おつまみなどいかがですか」と、とても澄んだ声が聞こえてきた。
思わず何か買いたくなるような声にひかれて視線を車両の前方に向けると、重そうなワゴンを押した車内販売員がこちらに向かってきていた。
身長は多分154cm。
体型は痩せ型。
胸はペタッとした感じだから、乳首は少し黒くなっているかもしれないけど、きっとAカップで貧乳。
年齢は20~25才といったところかな。
足のサイズは23.5cmだろうと勝手に決めつけさせてもらった。
そんな彼女の雰囲気が某TV局の○木アナに似た感じで、俺的にはちょっと好みのタイプだった。
それにしても、仕事とはいえ重そうなワゴンを押しながら売り歩くなんて、きっと大変なんだろうな。
などと思いながら「すみません。コーヒーください」と声をかけた。
「コーヒーですね。ありがとうございます」
輝くような笑顔と共にそう言った彼女の声はやはりよかった。
思わず、夜の彼女も見てみたいと思うほどに。
だからというわけではないけど、名札をチェックし、ついでに左手の薬指もチェックした俺。
テーブルの上にコーヒーを置いた彼女にお金を渡すと、彼女はつり銭を出すためにバッグに手をいれた。
その時、電車がポイントの上を通過したのだろう。ガクッと車両が揺れた。
たいした横揺れではなかったが、彼女はバランスを崩してヨタッとしながらこちらに傾いてきた。
とっさに助けようと出した俺の右手と彼女の左手が重なり、しなやかな指と無骨な指が絡み合う。
左手は彼女の右の二の腕あたりをつかんだ。
しかし、彼女を支えきれなかった><)
そのまま彼女は俺を下敷きにする形で倒れてしまったんだ。
骨ばった身体が食い込み痛かったけど、彼女の体重を感じてしまった。
同時に顔にかかった彼女の髪から甘い香りが…
彼女のはいた息が俺の首筋をくすぐったような気が…
俺は、『このまま抱きしめたい病』にかかりそうになり、一瞬呆けた(´Д`)
もしかしたら「幸せにするから」と意味不明なことを口走っていたかもしれない(そんな訳ないか…多分^^;;
我にかえった俺は紳士ぶって「大丈夫ですか。怪我はないですか」と優しく声をかけながら彼女の身体を起こしてあげた。
起き上がった彼女は、何度も何度も謝りながら頭を下げてきた。
そんなに謝らなくてもいいのにと思いつつ、赤面しながら謝り続ける彼女の健気さや仕草に危うく惚れそうになった。
数分後、俺はトイレの中にいた。
記憶に新しい彼女の髪の香りや二の腕の細さや柔らかさ、絡み合った指から伝わったしなやかな指の感触等々を思い起こしながら俺は一心不乱に右手を動かしていた。
目を閉じると彼女の笑顔と赤面し恥ずかしそうな表情をした顔が交互に浮かび上がる。
俺は自然に彼女の名前を呼んでいた。
トイレに入ってまだ1分もたっていないのに、すでに股間がムズムズしてきた。
早さなら誰にも負けない自信があるのだ。
「あ!彼女と手をつないだ右手でしてるってことは…間接手コキか?」と思い立った瞬間、頭が真っ白になった。
ハァハァハァ
俺は荒い息をしたまま、今回は激しく飛んだなと半ば感心しながらティッシュで汚れた先端を拭いていた。
ガラッガラッ
その時、いきなりトイレのドアが開いた。
え?
俺は驚きと共に全身が固まってしまった。
そこには鳥の巣みたいなヘアスタイルをしたオバハンが立っていたのだ。
そのオバハンも口をあんぐりと開けたまま固まった。
勃起したチ○コを拭いている男と仁王立ちしたオバハンが向き合った図の完成。
そしてそのまま数時間とも思える数秒が過ぎた。
ギャグなら「カァーッ カァーッ」とカラスの鳴き声が聞こえてきそうな感じだった。
先に動いたのはオバハンだった。いやオバハンの目だった。
オバハンの視線がゆっくりと俺の股間に移り、そしてゆっくりと俺の顔に戻ってきた。
俺は動けなかった。なにも出来なかったんだ。
次いでオバハンの口元が歪み、ガサツな声が聞こえた。
「若いんだから気にすることないよ。でも鍵はしめなさいね」
そして、そのままドアがスルスルと閉まった。
やっべーーー!みられちった!どうしよう!!
でも、見られたのが逝った後だったてのは不幸中の幸いだな。
扱いてる最中とか、逝ってる時だったら…って、いつだって変わんないじゃん!!
俺は今までになく動揺していた。
とりあえず急いで後始末をしてズボンをはいたが、ここでまた固まった。
俺が出るまで外で待っていたらどうしよう。でられない。トイレからでられないじゃないか。
考えること数分。
俺は意を決して、それでも恐る恐るドアを開けた。
そこには誰もいなかった。
ほっ
俺はそのまま何食わぬ顔をして自分の席に戻った。
だが、例のオバハンは俺の斜め前の席に座っていて、俺が席につくと振り返ってニヤッと笑ってきた。
その含みのある蔑んだような笑い顔を見た俺は針のむしろ状態になった。
そんな訳で俺は、目的地にはまだまだなのに途中下車したのだった。
あの時、鍵をかけさえしていれば…。