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空想…

トン

『ほな借りてくネェ…♪』
玄関先で、手渡した車のキィをクルクルと回しながら部屋の主である女がニヤリと笑う。

『あっ、せや!有るもん何使ぅてもェエけど、近所から苦情来るような声はやめてなぁ~(笑っ)』
女が笑いながらドアを閉め、出て行った。

『ふぅ…』

溜め息を付き、鍵を掛けると、奥の部屋に佇む少女に目を移しほっとする。
少女は…部屋の主の不思議な感性を具現化された奇妙な空間に好奇の目を向けながら視線を漂わせている。

『変わった女の子でしょ?…何か気になるモノあった?』
言いながら少女に近付く。

『なんか楽しい♪』

自分よりは女に年が近い少女の方が、この部屋の雰囲気に違和感が無いのかもしれない…。
思いながら少女を見つめていると、彼女の視線が壁際に吊された安っぽいコスプレ衣装に向けられていることに気が付いた。

ピンクのナース服…赤いチャイナドレス…黒のメイド服…。
どれも明らかにそうとわかる、男の欲望をそそる為の衣装達…。

ウケ狙いか…はたまた実際に利用してもらう為か…
プレゼントで貰ったと以前聞いた気がする。

『着てみたい…?』
少女に問い掛ける。

『いいの?』
少女の瞳が好奇の光で満ちる。

『撮らせてくれるならね!』
鞄からデジカメを取り出しながら答える。

『えっ!?撮るの!?ホントにっ!?』
少女が大袈裟に問い返してくる。

一番手前に吊されたナース服を少女に手渡しながら…
『アレ…?撮られたくないの…?』
と、また問い返す。

『ちょっと恥ずかしぃかも…』
ナース服を体にあてがいながら、少女が上目使いでこちらを見つめる。

『…恥ずかしいの…好きなんだよね…!』
言いながらシャッターを切る。

『…うん』
レンズ越しの少女が頬を赤らめながら肯く。

『着てみて…』
またシャッターを切りながら少女を促す。

『わかったぁ』

少女がシャッター音につられるように自身の手で衣服を剥ぎ取り、可愛らしい下着姿になる。
なるべくその肢体が伸びやかに写るように、広角側にセットしたレンズで距離を詰めて着替えの様子を撮っていく。

『…どうかな?』
着替え終わった少女が照れ笑いを浮かべる。

『ん、イイ感じ!…ちょっとエッチ過ぎるかな?』
からかい交じりに少女に声をかけ、その表情を少し離れた位置から望遠側で被写界深度を浅めにしながら捉える…。