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定点観測(序章)

トン

『なぁなぁなぁ なんかオモロいことないんかいな…なぁトンちゃん?』
いつも元気なタケちゃんからメールが来た。

『…ない。そんなに“オモロいこと”にばかり出くわしてたら、それをネタに芸人さんにでもなってるよ!』
暇を持て余した時のタケちゃんが結構しつこいのは知っているので、突き放すような返事を送る。

『いや、んなこたぁないやろ?トンちゃんがなんやコソコソ動き回って美味しい思いしてるって噂聞いてんねんでっ!ホラッ、親友のオレには全部話してみぃや!なっ!なっ!』

…やっぱりしつこい。
胸の前で十字をきりながら

『そんなワケないよ。何かあったら報せるって!まったく身に覚えのない“親友”までガサガサ揺さぶってネタにしようなんて…まったく…』

…と、ちょっとへそを曲げたフリをする。
切り裂かれた胸の中に、懺悔の気持ちと、ペロッと出した舌を転がしながら…。

『ごめんごめん、気ぃ悪ぅせんといて!ほな、なんかあったら教えてな!』

…なる程、タケちゃんの情報収集能力とそれにかける情熱は凄いな。
妙に感心しながら携帯をホルダーに直す。
と、直後にまたプルプルと携帯が震えた。
(…タケちゃん…しつこいって…)
手に取った携帯を開くと、今度はマスターからのメールだった。

『調子どう?…ちょっとイイネタ仕入れたんだけど、興味ない?』

文面から送信先が複数なのがわかる。
何がイイネタなのか全く想像できないが、マスターの“イイ”の基準が高いことは知っている。
すぐさま返信する。

『興味有り!詳細求む!』

何だか電報みたいだ…
1人で笑いながら返事を待つ。
返事は直ぐにきた。

『誘える人数に限りがあったから…とりあえずトンちゃん合格!…でも明日の夜9時に集合出来なきゃ不合格。OK?』

明日も平日。
派手な遊びなら週末になるだろうし…
なんだろう?
まぁいい、暇は暇だ。

とりあえず返事を出し、詳細の説明を待ったが、とうとう集合時間まで説明はなかった。
さてさて…どんなイイネタを披露してくれるのやら…?