リバーシブル
トン
『…シュウ』
ホテルの部屋に入るなり抱き付いてきた、ミホの火照ったカラダを受けとめながら軽く唇を重ねる。
ミホは堪らない…といった様子で唇に吸い付き、いやらしい舌の動きで侵入を試みてくる。
ここで素直に応じれば…またミホのペースで事が進んでしまうと感じた僕は、ミホの欲情をさりげなく…ただ心の中では必死に振りほどき、ミホを部屋にあったソファーに腰掛けさせた。
『ミホ…今日は僕の言うことを聞くって約束したよね?…守れないのかな?』
怒った…という雰囲気ではなく、諭すようにミホに語り掛ける。
『…ごめんね…つい…』
ソファーに腰掛けたミホが、片手をソファーにつき、もう片方の手を口元に持っていきながら応える。
見下ろす形になった僕の目を、爪を噛むように指先をくわえたミホが上目遣いで覗き込んでくる。
『わかったらいいんだよ…でも…ちゃんと約束は守れるかな?』
もう一度念を押す。
ミホが嬉しそうにコクンと肯く。
その仕草にまた湧き上がる欲情を抑えつけながら、ミホの口元にとどまる意味を無くした手を取り、今度は自分の口元へと導く。
ぼぅっとしながら自分の手の行く先を見つめるミホ…。
どうやらイマジネーション豊かなミホはこの後の展開を予測し、既にその尽きることのない欲望の泉から、淫らな湧き水を溢れさせているらしい…。
すぐ目の前に差し出されたミホの指先を見つめる。
仕事柄派手な化粧を控えているミホの指先は、それを象徴するように飾り気がない。
その飾り気の無い手は普段、人前では甲斐甲斐しく他人の世話をやいているらしい。
そして独りきりになったミホと向き合う時には…
抱えきれ無いほどの欲望に支配されたミホ自身を慰める為に、その身を淫らに汚れた肉壷に埋め、リズミカルに腰をくねらせ…ミホ本体の腰をクネクネと操作するらしい。
日常と非日常をミホのどのパーツよりも感じているだろうその指先をゆっくりと開いた口の中に押し入れる。
ミホの日常も非日常もすっかり僕がくわえ、包み込んだ気分に浸る。
ミホはミホで目を閉じ、その指先の感覚を…僕の思いを…淫らな期待感を…ジットリと受け止めているらしい…。
ミホの空いている片方の手はいつの間にかミホのカラダを這い回っている。
僕もミホの腕を掴んでいない方の手をミホの髪へと伸ばし、そっと撫でてやる。
口の中では舌先が動き回り、ミホの指に絡みつく…。