『モナカ…?』⑦
トン
『…つい約束しちゃったから来たけど…冗談だよね…?』
玄関先に立つユウコちゃんは俯き加減でボソボソと呟いた。
いつもの明るく華やいだ雰囲気はそこにはなかった。
『勿論、冗談…』
言い終わらない内に
『だよね!』
と、やっと目を見つめながらユウコちゃんが口を開く。
表情はパッと明るく輝き、やっぱり綺麗な顔立ちだなぁ…と今更ながら思ってしまった。
『タ~カコっ!』
更に明るく振る舞いながら、ユウコちゃんが部屋に向かって歩きだす。
サーッ
部屋を仕切るカーテンを開けたユウコちゃんが慌てて振り向く。
『…何?』
ユウコちゃんの肩越しに、縛られた両手をタンスの脚に固定され、目隠しとベッドフォンをつけられたタカコの姿が見える。
『…え?』
戸惑うユウコちゃんが訳が分からないという声を上げる。
『…最後まで聞かなきゃ…勿論冗談じゃないよ!約束は守らなきゃ…ね!』
言いながら下半身を露出する。
突き出た凶器がブルッと武者震いする様を、唖然としながらユウコちゃんが見つめる。
『助けてくれるんだよね?ホラ…コレを大人しく宥めてくれなきゃ…何時もの僕に戻れないよ…』
邪魔な衣服を剥ぎ取りながらユウコちゃんに近付く。
『…そんな…ウソ…』
ユウコちゃんが後ずさりする。
『タカコがちゃんと最後まで面倒みてくれてたらねぇ…。でも…だらしないタカコをけしかけて、こんな風にしたのはキミなんだから…ちゃんと助けてくれるよね?』
自分でもヒドいことを言っているなぁ…と思いながら、その言葉と、この異様な状況に酔いしれていた。
『…ちょっと…ちょっと待って…』
タカコの側まで後ずさりしたユウコちゃんが呟く。
視線は凶器を見つめたまま…。
ジリジリとユウコちゃんに近付く…
尚も後ずさりしたユウコちゃんがベランダへ続く窓に退路を絶たれる。
ジリジリ…
追い詰めたユウコちゃんの手を掴み、その手で凶器を握らせる。
『あっ…熱い…』
ユウコちゃんの口から吐息が漏れる。
『そう…この熱を吐き出さなきゃ…ホラ、手伝って…』
ユウコちゃんの耳元に熱い息を吹きかける。
凶器がまた武者震いをする。
『…イヤっ』
口から漏れた声とは裏腹に、グッと握られた凶器にユウコちゃんの意志を感じ取った。