夢…⑥
トン
『…わからないの?…今の…今のこの欲望を満たす為なら何でもしてしまう…どんなに慰めても慰めても欲望が尽きない私を引き出したのはアナタよ!ほら、そう言われたら肯くしかないでしょ?』
相変わらず悪魔の笑みを携えたアユミが強い口調で僕を射抜く。
『そんなアナタには…私がどこまで落ちてゆくのか…いいえ、他の男達の欲望によってどこまで落とされ、その欲望にまみれるのか見届ける義務があるのよ…そう、あるの。私はそれを望むわ…』
悪魔の笑みの正体がわかった。
アユミ自身も抑えられない、欲望に支配されることのみを望む、もう1人のアユミを…その行く末を一緒に見つめる罰を僕に与えるつもりなんだ…
アユミをこの際限ない欲望の世界に引きずり込んだ罪を償う為の…
罰を…
アユミは押し入れから脚立を取り出すと、戸袋を指差し、そこに潜むように促す。
必死にそこに入り込んだ僕にビデオカメラを手渡す。
『見つかったら…知らないよ…』
冷たい声を残し、戸袋の少しの隙間を残し閉められる。
アユミは押し入れからカメラの三脚を取り出すと、さっき使ったカメラをそこにセットした。
一連の作業が終わった瞬間、ドアチャイムが鳴り、アユミが目配せをし、玄関へと歩き出した。