リバーシブル⑥
トン
指定されたコンビニに着くと、途中で後部席に移動させたミホを残し、店内に入る。
携帯に送られてきた顔写真の男を探す。
…いた。
雑誌売場の入り口から遠い位置にいる男に近付き、声をかける。
『探しものは有りましたか?』
驚いたように振り返った男の顔を確認する。
間違いない。
『あっ…ありました!…トンさん?』
男が落ち着かない様子で応答する。
『シッ…』
男に向け片目を瞑りながら口の前で人差し指を立てる。
『シュウって呼んで…まぁ誰にも聞かれて無いだろうけど一応ね…』
笑顔を作りながら男に伝える。
『ここから歩いていけるんだよね?』
男は僕の問いにコクンと頷く。
男と店内を出、後部席にミホがいることをサッと確認して貰ってから、男の部屋へと向かった。
…『狭くて汚い部屋ですけど…』
ワンルームマンションの部屋へと案内してくれた男が、申し訳無さそうに言う。
『いや、よく片付いてるし…良い部屋だよ…ただし…声はよく通りそうだね…』
クルッと部屋の中を探った視線を男に向けながら言う。
『あぁ、声は確かに…でも右となりは空き部屋で、左は知り合いなんですが今帰省中だから心配ないかと…下は…ごめんなさい、よくわかりません』
男の言葉の裏を取ろうと、両サイドのドアをドンドンと叩いてみたが反応は無い。
『汚れるならベッドか床…どっちがいい?』
僕の問いかけの意味が解らないのか、男がまばたきを繰り返す。
『いや…あの子ノリノリになると…汚してしまいそうだから…』
僕の言葉に何をイメージしたのか、顔を伏せながら
『どちらでも…どちらでも構いません』
と、モジモジしながらも、男が言いきった。
『そう、車はどこかに停めれるかな?』
笑顔を携えながら聞くと、男も笑いながら答えた。
『隣が借りているスペースが使えます』
『ヨシ…じゃあ彼女を迎えに行こう…』
男を促し、コンビニへと向かった。
道々男と話をしてまる。
男は大学生。
童貞ではないが経験豊富という感じでもない。
過去の経験から最終的には“役立たず”かもしれないが…
経験豊富なクセ者に引っ掛かって痛い目に遭うよりはいい。
特にミホにとっては初めての体験なはずし…。
男との問答をしながらそんな事を考えていた。